逝く夏
逝く夏の歌
(中原中也「山羊の歌」)
並木の梢が深く息を吸つて、
空は高く高く、それを見てゐた。
日の照る砂地に落ちてゐた硝子(ガラス)を、
歩み来た旅人は周章(あわ)てて見付けた。
山の端は、澄んで澄んで、
金魚や娘の口の中を清くする。
飛んでくるあの飛行機には、
昨日私が昆虫の涙を塗つておいた。
風はリボンを空に送り、
私は嘗(かつ)て陥落した海のことを
その浪のことを語らうと思ふ。
騎兵聯隊や上肢の運動や、
下級官吏の赤靴のことや、
山沿ひの道を乗手(のりて)もなく行く
自転車のことを語らうと思ふ。
纏わり付く熱い空気の中を泳ぐように漂う。
ただ在るだけでもでじんわりと汗ばむ「夏」が好きです。
夕方の水撒きの時間は至福です。
埃が鎮まり、生き物すべてが水の享受を喜び、その躍動が伝わってきます。
逝く夏を名残り惜しく感じます。
(中原中也「山羊の歌」)
並木の梢が深く息を吸つて、
空は高く高く、それを見てゐた。
日の照る砂地に落ちてゐた硝子(ガラス)を、
歩み来た旅人は周章(あわ)てて見付けた。
山の端は、澄んで澄んで、
金魚や娘の口の中を清くする。
飛んでくるあの飛行機には、
昨日私が昆虫の涙を塗つておいた。
風はリボンを空に送り、
私は嘗(かつ)て陥落した海のことを
その浪のことを語らうと思ふ。
騎兵聯隊や上肢の運動や、
下級官吏の赤靴のことや、
山沿ひの道を乗手(のりて)もなく行く
自転車のことを語らうと思ふ。
纏わり付く熱い空気の中を泳ぐように漂う。
ただ在るだけでもでじんわりと汗ばむ「夏」が好きです。
夕方の水撒きの時間は至福です。
埃が鎮まり、生き物すべてが水の享受を喜び、その躍動が伝わってきます。
逝く夏を名残り惜しく感じます。
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